2013/02/06

Diversity(多様性)とinclusiveness(包含性)とは何か?

今学期にとっている授業のひとつにCross Cultural Communicationというものがある。端的にいうと異文化の中で如何にリーダーシップを発揮するか、その為に如何にコミュニケーションをとるかを学ぶ授業。Thunderbirdでも有名な授業のうちのひとつで、徹底的にビジネスにおける異文化コミュニケーションとは何なのかを学ぶ。


今日は授業でdiversity(多様性)inclusiveness(包含性)の違いについての説明があった。近頃はビジネスシーンにおいてやたらとダイバーシティが叫ばれる。多様性を認めよう、多様性を会社内に確保しようといった具合に。しかし、多様性とはそもそも何なのか?という定義がまだ曖昧な気がする。更にはその多様性を有効にビジネス上の戦略に落とし込めている会社は多くないと思う。


実際に授業でも「あなたにとってのダイバーシティとは何か?」という考えをディスカッションした。僕は隣の席にいたインド人に「自分にとってのダイバーシティは単に国籍や異文化だけではなく、性別やバックグラウンド、考え方に至まであらゆる違いを共存させることだと思う」と答えた。しかし答えた後に何か少し胸のあたりに気持ちの悪さを感じた。「なんか口先だけで模範解答を言ってしまったな」と。その後、教授が急に口を開く。「じゃあinclusiveness(包含性)って何なのか?」するとみんなが一斉に意見を言う。「Inclusivenessとは単に違いを確保するだけではなくて、違いを認め合い更にはその違いを元に何かをクリエイトすることだ」、「違いを認め合うだけじゃなくて強みに変えることだ」と。ご尤もな意見だった。


その後、議論は思わぬ方向に進む。ある学生が口火を切る。「教授、ThunderbirdはDiversityはあるがInclusivenessはまだまだ不足してるんじゃないか?いつも同じチームとばかりプロジェクトを組む学生がいる。このクラスは教授によってランダムにチームが組まれるからいいが、Thunderbirdはもっとinclusivenessを生む努力をしなければならないと思う。学校をもっと良く変えていく必要がある」 この発言に対して別の生徒が反論する。「ビジネスシーンでは信用が大切。仕事を通じて周りに貢献できなければチームメイトの信用を失う。ビジネススクールはそのFoundation(素地作り)作りだと思う。僕達はDiversityを認めている。でもだからといって常に誰でも常にウェルカム、という訳にはいかない。常に貢献し、結果を残し続けなければ周りからは相手にされなくなる。今僕達はビジネスシーンに出る為の訓練をしているんだ」 するとまた、議論を開始した学生が一言。「サンダーバードでは多様性なんか認めていない。それは少し上辺な意見な気がする。」と。おそらくこの学生はもっと他に言いたいことがあったのだと思う。何かを感じながら学生生活を送っているのではないかと推測した。


僕はこれらの意見の両方にサポートする視点があった。確かにビジネスシーンでは信用は大事だし、周りと協調できなければいつかは誰も振り向いてくれなくなる。しかし、ThunderbirdのDiversityはまだまだ発展途上だし、Inclusivenessに昇華しきれていないとも感じる点があった。上記の学生が言う通り、実際いつも同じグループで固まる(これは授業以外、という意味で)学生が存在することも事実だし、特定の国籍で群れる学生達も存在する。更にはアメリカ社会で囁かれる目には見えない境界線のようなものも少なからずあるのかも知れない。


僕個人の意見としては、サンダーバードは間違いなく多様性を認めているし、Inclusivenessを確保しようと様々な取り組みを行っていると思う。そしてそれを僕自身評価している。更にはアメリカ人、インターナショナルの学生全体を見てもフレンドリーな学生の数は圧倒的に多いし、そのお陰で楽しさを感じる瞬間が多々ある。一方で、日本にいた頃と同じように何も不自由無く、何も意識せず生活できるか?と言うとそれはただの嘘になる。しかしながら、そういった様々な「ボーダーのようなもの」を越えていけるか否かは最終的には「個人の一歩」に掛かっていると思う。同じ国籍で群れようと思えばいくらでもできるし、ひたすら母国語で生き延びようと思えばそれすらも可能だと思う。しかしそれをしてしまっては、僕にとってのアメリカで生活している意味がなくなってしまう。僕は世界を学びに来ているし、アメリカも中国も韓国も他の国のことも出来る限り理解したいし、好きになりたい。そんなに甘くない、という意見も承知の上で。。。でも、そうした比較対象を正確に持つ事が最終的に「日本」を再考するソースになると思う。


授業の終盤で教授がこう言った。「OK。この議論はもの凄く重要でみんなにとって意味がある。もし今、Thunderbirdが多様性はあるが包含性に欠けているとすれば、それは何故か?そしてどうすれば克服できるか?を次回議論しよう。」普段は冗談を連発する明るい教授の顔つきが、この議論が始まってからもの凄く真剣になっていた。僕がThunderbirdを好きな理由として、こういった重要かつ繊細な問題からも目をそらさずに真剣に取り組むところが挙げられる。学生も教授も学校運営側もGlobal/Internationalについて徹底的に向き合っている。


次回の授業までに解決策を考え、授業で自分の意見をシェアしようと思う。次の授業がとても楽しみだ。




(授業で流されたBASFという会社のDiversity/Inclusionに関する映像)